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【第2部】 第34話 王子とデート②

last update Last Updated: 2025-10-11 19:01:11

「うわー、綺麗!」

 視界に飛び込んできたのは、一面に広がる緑の絨毯。

 周りを見渡せば、色とりどりの花畑が点在し、たくさんの木々たちが風に揺れていた。

 見ているだけで、心が癒されていくようだ。

 マイナスイオンのおかげか、空気も美味しく感じられる。

 今日は、運よく晴天――

 あたたかな日差しが降り注ぎ、空は青く澄み渡っている。

 私は大きく深呼吸した。

「……気持ちいい〜」

 ヘンリーは目を輝かせながら、景色に見惚れている。

 無邪気なその横顔が、子どもみたいで……自然と頬が緩んだ。

「あー、なんだか思い出すなあ、ねっ!」

 嬉しそうに笑いながら、私をまっすぐに見つめてくる。

 思い出す……とは、前世のことだろうか。

 確かに、前世の私たちは、よく草原でデートをしていたような気がする。

「流華、行こう!」

 ヘンリーは、私の手を取ると走り出した。

 楽しそうに駆けていく彼の背中を見つめながら、たまにはこういうのも悪くないか、と思った。

 すっかり彼のペースに巻き込まれているような気もするが……まあ、いいか。

 ヘンリー楽しそうだし。

 今日は付き合おう。

 この前、お世話になったしね。

 そう決めた私は、今を楽しむことに集中するのだった。

 この広大なテーマパークは、一日ではとてもじゃないけど回り切れない。

 それを知ってか知らずか。

 ヘンリーは子どものようにはしゃぎながら、私を連れまわしていく。

 パーク内を巡り、様々なアトラクションを楽む。

 メリーゴーランドに始まり、動物の餌やり、迷路、アスレチック。

 さらには子ども向けのゴーカートまで。

 子どもが好きそうなアトラクションばかりを好むヘンリー。

 彼に付き合うのは、かなりの羞恥心と闘わなければいけないことが多く――

 かなり、疲れる。

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